2016/05/31

一代限りのUMPC復活 - GPD WINとDragonBox Pyra

復活したUMPC


GPD WINDragonBox PyraというUMPCをご存じでしょうか。
どちらも発売中のものではなく、それぞれIndiegogoと独自サイトで予約受付中のUMPCです。UMPCというジャンルをそもそもご存じなかったら知らん。

そうです。UMPCなんです。4年以上前にUMPCの未来について散々書き殴って見事に外れ、ジャンルごと死滅したUMPCが復活しました。

ただ、これでUMPC復活!未来は明るい!かというとそんなことはなく、この2台は両方とも一代(一台)限りの製品となる可能性が非常に濃厚です。

そんな時代の徒花になりそうなこの2台をしばらく追いかけてみたいと思います。

久しぶりに投稿


話は変わりますが、1年以上ぶりの投稿です。

いや、投稿間隔について考えるのはやめよう・・・やめます。
にしても、1年前の記事を読み返すと酷いですね・・・「最高に変態なマザボ」X99E/ITX-acは実際に買っちゃいましたが、それはともかく新MacBookについてうだうだ書いておいて結局買ったっていう。

iOSデバイスについて言えば、iPhone 6 Plusを買ったことで立場が微妙になったiPad mini Retinaを売ったものの、結局iPad miniの利便性を忘れられずiPad mini 4(のしかもドコモ版)を買い戻す形になり、終いには最後までiPhone 6 Plusのサイズに慣れられずAQUOS PhoneことSH-02Hを買いAndroidスマホユーザーになっている、という変遷です。
(SH-02Hは残債少なかったSC-03Gを機種変する形で購入+iPhone 6 PlusのSIM挿してます。iPhone 6 Plusは割賦が残っているので塩漬け中)

iOS周り以外だと、Galaxy Tab S 8.4 SC-03Gを買ったことで危惧していたとおりThinkPad 8の立ち位置が危うくなりこれを売ったのですが、こちらも結局Windowsタブレットが恋しくなってしまいXiaomiのMi Pad 2を購入。Mi Pad 2は日本だとマイナーなのでどっかでちゃんと記事を書きたいところ。

XiaomiやGPD WINとかで察せられるところかもしれませんが、1年前と今で結構変わったところと言えば、中華製品がマイブームになったことですかね。これもMi Pad 2と併せておいおい書きたいところです。大体実現されないやつ。

現在の戦力編成は
スマホ・タブレット:SH-02H + iPad mini 4 + SC-03G + Mi Pad 2
ノートPC:MacBook 2015モデル
デスクトップ:たくさん(サーバー除いても5台)
という酷い状態です。お察しの通り全然使い分けられてない。

戦力編成は別途ページ作って定期的に更新した方が自分のためにいいですね・・・

新しいUMPC


話を戻します。

タブレットの勃興により死滅した(かに思われた)UMPCというジャンルに、最近登場した新たな製品がGPD WINとDragonBox Pyraです。結論から言うとどちらも買うのでどちらもしっかり紹介したいところですが、ここではざっくりと説明しておきます。

GPD WIN



こちらはAtom Z2760が出た頃から待望していた、タブレット向けチップを積んだフルWindows 10搭載UMPCです。4コアAtom x5-Z8550・メモリ4GB・SSD64GBを搭載して5.5インチ液晶・ニンテンドー3DS LLサイズという夢にまで見たスペックです。

GPD XDという似た形状のAndroid端末を作っているGPDという会社が始めたクラウドファンディングプロジェクトでしたが、(主にUMPCに飢えた日本人の)投資者が殺到しさっくり目標額に到達に絶賛開発中の製品です。まあ、GPD XDで実績のある会社なので普通に発売されると思います。

DragonBox Pyra



一方こちらは(今まで追いかけていた意味での)フルWindowsが動くUMPCではなく、ARM CPUを搭載してLinuxが動作するUMPCです。

しかしながら、前世代製品であるOpenPandoraより遥かに強力なCortex-A15を搭載していることもあり、非常に一般的なディストリであるDebianがプリインストールされていて(Windowsを動かさない範囲では)完全にPCとして使える製品になっています。

CPUはARMのためAtomにはさすがに見劣りしますが、メモリ最大4GB・SSD32GB(ただしMicroSD内蔵で拡張可能)というスペックで、GPD WINが対応しないLTEにも対応し、GPD WINより更に小さい5インチ液晶・ニンテンドー3DSサイズという強力な製品になっています。

こちらは期待の新星というわけではなく、OpenPandoraの後継として長らく開発が進められてきた製品で、たまたまプロトタイプ完成・予約開始がGPD WINと重なって2016年になった、というものです。

一代限りの夢


待望のUMPCが、しかも同じ年に2台も出るなんて夢のような話ですが、この流れが波及して更なる後継製品、競合製品が出てくる可能性は残念ながら低いと言わざるを得ません。その理由を説明していきます。

GPD WINの将来性


まず、GPD WINについてですが、当初GPDは後継製品の開発に乗り気で、「GPD WINがヒットしたらGPD WIN 2もあり得る」という立場でした。しかしその後重大なニュースが発生します。なんと、Intelがタブレット向けAtomから撤退してしまいました。

GPD WINはタブレット向けAtomを流用して作られているので、言うまでもなくこのニュースは致命的です。新型Atomを搭載したGPD WIN 2が世に出る可能性はゼロになりました。(幸い、GPDによれば今世代のAtomチップは供給が続くのでGPD WINの生産には影響がないそうです)

新型Atomに載るはずだったGoldmontコア搭載製品自体はApollo Lake(Celeron / Pentium)として発売されるようですが、これを使ってUMPCが作れるかというと、作れません。CPUコアだけでなくSoC全体で低発熱・低消費電力化を図っているAtomと比べると、Celeron / Pentiumの製品ラインはSDP・TDPが高すぎてGPD WINサイズでは冷却できません(そもそもGPD WIN自体「x7-Z8750は冷却が難しくて載せられない」とGPDがコメントしたくらいギリギリの冷却能力です)。

10インチ前後の2-in1 PCでは冷やせる範囲なので、まさにIntelが見切りを付けた8インチ前後のピュアタブレットだけが困る製品ラインの切り捨てです。

SoC自体がなくなってしまったわけですから、Apollo Lakeクラスの製品、あるいはCore mクラスの製品のTDPが現行Atomレベルに下がるまでGPD WINのような製品は作れないことになります。CPU性能向上の鈍化を見ると、2,3年では実現できないんじゃないでしょうか?

あ、言及し忘れましたがAMDにはこのクラスの省電力SoCを作る技術が現状無いです・・・

Pyraの将来性


一方PyraはARMのSoC(OMAP5)を搭載しているため、Intelの動向に左右されない強みがあります(ARMは色んな会社が作っているため)。また、後継製品を作るまでもなく、CPUボードのみのアップグレードに対応するなど設計自体は非常に将来性を意識したものになっています。

しかし、残念ながらPyraにもSoCの供給問題がつきまといます。ARMのSoCは百花繚乱なれど、Pyraに適したSoCは現状OMAP5しか存在していません。

最大の問題はLinuxドライバが無いことです。現行のARM SoCはほぼ全てAndroid向けに作られているので、Androidは動作しますが(Androidでない)Linuxの動作は想定されていません。AndroidもLinuxではあるものの普通のLinuxシステムとは乖離してしまっているため、Androidが動いてもそのままDebianのようなLinuxを動かせる状況にはなりません。

SoCを供給するメーカーがLinux用ドライバを提供してくれれば良いのですが、そういうSoCがまず極小であることが問題です。更に、Linuxが動くSoCであっても多くのメーカーはPyraのような小ロット製品にSoCを供給してくれない(例:NVIDIA)のが状況を悪化させています。

唯一条件に合致したTIのOMAP5ですが、こちらは悲しいことにスマホ向け(=高性能)SoC開発から撤退してしまったためOMAP5後継の高性能チップが出る見込みがありません。

OMAP5が採用してるCortex-A15デュアルコアは、最近のスマホにこそ見劣りするものの性能的に大きなジャンプアップを果たした最初の世代のコアなので、ある意味ギリギリ間に合ったという感じです(Cortex-A9あたりで断絶していたら性能的に厳しかった)。

PyraのCPUが更新されるには、PyraがARMベンダーを振り向かせるくらい相当売れないと難しそうです。そして、1万台売れるような製品ジャンルでは無いのが厳しいところ。

競合機種の可能性


ほとんどゼロと言っていいでしょう。なにせGPD WINやPyraと同様に、心臓部たるCPUの供給が見込めないわけですから、この状況が変わらない限り解決できません。

VAIOのような技術力の高い会社なら、Core mクラスのCPUを(GPD WINほどとはいかないにせよ)VAIO Pくらいの筐体に落とし込める可能性も無くはないですが、VAIO株式会社設立後の動きを見るにUMPCというジャンルへの意欲は恐らくもう無いと思います。滅茶苦茶期待してたんだけどなぁ・・・

結論


ここまで長々と書いてきて何が言いたいかといえば、「多分次は無いから今買うしかない!」ということです。

GPD WINはタブレット向けSoCのおこぼれ、Pyraはスマホ向けSoCのおこぼれで成り立っています。かつてはノートPC向けプラットフォームを無理矢理詰め込んでいたものだし、今も昔もUMPC向けSoCなんてものは存在せず、依存する他のプラットフォームに翻弄され続ける運命にあります。

「UMPCは死んだ」などと書いたこともありますが、思えばUMPCがジャンルとして確立した時代は無く、世に出ては消え、を繰り返すものなのかもしれません。次またこういった製品が世に出るのが何年後かもわからないのですから、この一瞬の復活をしっかり楽しみたいと思います。

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