2024/03/03

8年の時を越えDragonBox Pyraが届く!

DragonBox Pyra、ご存知でしょうか。あるいは覚えていますでしょうか。なんと2016年5月にプレオーダーしたこのUMPC、度重なる遅延の末ほぼ8年後となるこの2024年3月に自分の元に届きました。

今となっては初代GPD WINはおろかRaspberry Pi 4/5より遅いこのPyraをどう実用するかというと正直かなり厳しいわけですが、ひとまずはPyra自体の紹介や届くに至るまでの流れを含めたファーストインプレッションができればと。

 

Pyraとは?

もうこのへんは「知ってる」となるようなオタクしかいないと思うので軽く流していきますが。

PyraとはARM SoC搭載のLinux UMPCで、同人ハード的な形で企画・製造がされているPCです。5インチタッチスクリーン・キーボード・ゲームパッドを装備し、レトロゲームのエミュレータを指向しているあたりはGPD WINに近い系統の(GPD WINの方が後なんですが)のハンドヘルドPCで、先代にあたるこれまた製造出荷で大炎上したOpenPandoraのコンセプトを継ぐものになっています。自分はOpenPandora持ってませんが。

公式サイトはこちら。
https://pyra-handheld.com/boards/pages/pyra/

CPUはCortex-A15デュアルコア、4GBメモリ、32GB eMMCと開発当時のARM SBCと比べると強力な構成で、ゲーム専用OSではなくフルのDebianが動き、しかもLTE搭載も選べるということでとても魅力的なデバイス、だったんですが。

この手のデバイスの運命として、開発・製造は遅延に次ぐ遅延、というか元々「できたら出す」というスタンスだったので何をもって遅延なのか?すらわからない状態で本当に完成するのかさえわからないまま何年も待たされることになってしまいました。

 

プレオーダー

さて、Pyraの開発は2014年から始まっており、そこからも既に結構経った2016年には動作するプロトタイプまでは完成しており、これを機にプレオーダーが開始されました。

自分としてもベーパーウェアはまあまあ警戒するタイプなのですが、プロトタイプがそれなりの完成度に見えたため、これなら完成・出荷もそう遠くはないだろうということで、プレオーダー開始の初日、2016年5月1日に注文しました。


ここまで動いてたら半年とか1年くらいで届くと思いません?????????

このときは全額支払いではなく、頭金(≒当初想定の製造資金)として400ユーロを支払い、出荷時に残額(自分は4GB+LTEの最上位を選択したので+226ユーロ)を支払う、という仕組みでした。


余談:ワイモバイルとPyra

さて、プレオーダー時には既にGPD WINのIndiegogo出資も実施(2016年2月)しており、差別化要素が必要だよな、との考えもあり前述の通りLTEモデルを選択しました。

とはいえPyraにJP仕様などあるはずもなくLTEモデムはUS/EU仕様しか選択できませんでした。しかしUS仕様は論外として、EU仕様+ソフトバンク系SIMであれば対応バンド的に実用になりそうだったので、EU仕様を選びました。

そんな中、2016年8月に以下のSIMが登場しました。

Y!mobileのデータ専用プランが月額500円に――Yahoo!プレミアム会員向け特典
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1608/02/news123.html

ヤフープレミアム契約していれば1GBが500円になるというデータ専用SIMでした。当時から(今も)ヤフープレミアムは入っていましたし、Pyraで月数GBも使うとは思えなかったので最適なSIMだったので飛びつくように契約。

そしてPyraに刺すことのないまま8年経ちました(笑)。通算45,000円以上払ってますね。

もちろん8年寝かせておいたわけではなく、海外端末に刺すにはワイモバイルのSIMは便利だったので結果的には持っていてよかったSIMです。今ではSurface Duoに刺さっています。

このキャンペーン自体は2017年6月にはもう終わっているのですが、ヤフープレミアムとの紐づけを一度でも切らさなければ今でも500円で使えるので、今も一応保有しています。今となっては1GB/500円のコスパは悪いですがMNO SIMを500円では中々持てませんからね。

唐突に何の話だという感じですが、Pyraが無かったら契約しなかったSIMなので、個人的には挿し替えたりする度にPyraを思い出させてくれていたSIMです。


届くまでの日々

閑話休題。

しかしここからが超スローです。基板の修正、ケースのここを削る、キーボードの調整・・・しかしこれも最初の1,2年くらいで、あまりにも昔のことすぎて自分でもいつにどういう工程が進んでいたかはまったく覚えていません。公式のニュースポストを追えばわかりますが。

この間、Atomだった初代GPD WINは言うに及ばず、Core mのGPD WIN 2すら2018年には入手しており、既にPyraが届いてもバリバリ実用するかというと怪しい状況になっており、興味も薄れてしまっていました。もう届かないこと自体をネタにする以外に話題にすることがなく。

そんな中、そろそろ製造するから本体カラーを選んで、というメールが来たのが2020年8月でした。迷惑メールフォルダに入っていて危うく見落とすところでした。この時点で実に4年経っています。おお、ついに届くのかな、と思ったのですが・・・(まあこの頃はコロナ禍真っ只中ですので、そこで何もかも遅延したのはやむ無しですが。コロナ禍よりよっぽど前に作れよというのはさておき・・・)

ともあれ、2020年中に製造出荷は始まりした。ただ、この頃はまだ自分のようにプロトタイプ完成後にプレオーダーした人ではなく、もっと前からPre-Preorderしていた人向けに出荷していたようです。つまり、一応待ってさえいれば手に入る状況にまでは達しました。それが3年以上になるとはまったく思っていませんでしたが。

出荷開始といってもやはり初回出荷したら細々した不具合は見つかったようで、ロットごとに少しずつリビジョンアップする工数がかかっていたり、何よりちゃんとした組立工場?に発注する資金はなかったらしくレンタルスペース借りて開発者とバイトで手組みしているという感じだったため出荷が遅々として進まなかったようです。開発者(ED)もPyraで収入を得ているわけではない会社員で空き時間に組むしかなかったようですし。

さて、いつまでの注文が出荷可能になったかはこのスレッドで更新されています。

Pre-Preorderを捌いてから一向に進んでいないことがわかります。2022〜2023年にかけては製造の中断と再開、そしてついに製造コスト上昇に起因する資金不足(というか逆ザヤ)に陥ったようです。幸いDragonBoxは他のレトロゲー関連機器の通販事業はやっていて破産して飛ぶという状況ではないらしく、他の売上とPyraの残金入金で資金が出来たらちょっとずつ作る、というフェーズに入ったようで1年半でプレオーダー10時間分しか進まないという状態になりました。

それでもまあ、ED自身も書いていますがOpenPandoraのようにPyra一本でやってて破産する、というより遥かにマシでしょうが・・・

そして私は、現地時間(UTC+2)の2016/05/01 16:52:16にプレオーダーをしており、6時間半差で更に待たされる、ということに・・・

 

そしてついにその日が来る

上の時系列にしても今回改めて整理しただけでもはや熱心には追っておらず、「製造出荷がずっと止まっている」という認識のまま数年過ごしていたわけですが、2024年2月9日(現地8日)、ついに

Your Pyra is ready

と題したメールが届きました。上述のスレッドでも

  • 2024/02/08 : 2016/05/02 10:15:00まで

と、半年で丸一日分進捗しており、ついに自分のプレオーダーが出荷対象になりました。

しかしここで悩みが生じます。先の通り当時は頭金しか払っておらず、購入には残額の支払いが必要です。送料も含めると追加で270.91ユーロの支払いが必要でした。こうなるとサンクコストの問題になってしまいます。つまり671ユーロの価値が無くとも、271ユーロに値すれば買っても良いわけですが、現実は2024年においてはもはや271ユーロの価値があるとも言いづらい製品で、400ユーロをドブに捨ててでも買わないほうが正しい選択・・・となってしまうわけです。(※正確には頭金というより購入時に使える400ユーロのクーポンを先に買った体になっているので、買わないと返金されるわけでもないはずなので)

なーんて言いましたが起きたら(6:18に)メールが届いていて、その日の夜には注文してました。271ユーロの価値を見出したわけでも、400ユーロを捨てるのが惜しかったわけでもなく、もうネタとして取り上げるための意地みたいなものですね。

 

時の流れは残酷なもので、2016年5月に頭金400ユーロを支払ったときのカード明細は49,985円でした。大体125円。今回残額270.91ユーロの明細は45,431円です。167円です。最初に満額払わせてくれた方が安くて悩みも無かったな!

プレオーダー時から引っ越して配送先住所も変わったし、20代から30代になっているし、コロナ禍でリモートワークになってめっきり外に出なくなりそもそもモバイル機器の出番が減るしで、環境がずいぶん変わってしまい、これまた時の流れを感じます。独身なことだけ変わらなかったが。


ここから組み立ての最終工程があり、出荷まで2週間弱で2/22、通販としてはずいぶんチンタラしていますが8年間トータルの中では瞬時のようなものです。

そして2024年3月1日、ついにPyraが届きました。


さあ開封だ!

ここまでダラダラと文字ばっかりですみません。誰がやっても代わり映えしない開封の儀というのは本来あまり好きではないのですが、プレオーダーしてる日本人のブログなりサイトなりは他に無さそうなのでまあ良いでしょう!(日本語でググるとトップ2が詐欺で有名なサイトなのは嘆かわしいことです)




カラーは黒です(カッパーにするとまだ届かないらしい)。こんな感じで入っておりました。液晶がツルテカなので映り込まないよう撮るのが難しい。


バッテリーは分かれて本体の下に収納されてました。(というかそう、バッテリーは着脱できます)



背面はこんな感じでバッテリーが格納されます。バッテリーの下にはmicroSDとSIMスロットが。microSDは内蔵eMMCと排他でブートドライブにできるそうですが、まあ使わないかな・・・microSDはランダムアクセスが終わっているので内蔵eMMCかフルサイズSDを使うだろうし。あとSIMスロットは今どき誰も持ってないと思われるフルサイズ仕様なので下駄が必要です。



ディスプレイがイマイチちゃんと閉じきらないのは御愛嬌でしょうか。筐体はプラですしお世辞にも高級感はありませんが、異様なガジェット感はしっかりあります。左下はスタイラス。



前面にフルサイズSDスロットが2つあり、こちらからもブートできます(というか刺しているとブートされるっぽい)。

背面は2016年当時すら(というか一度も)流行ってなかったmicroB USB 3.0ポートが時代を感じさせます。フルサイズのUSB 3.0ポートがあるように見えますが、これは専用アダプターでUSB 2.0/SATAを分岐させる変態仕様の結線の都合上のようで実際は2.0です。さすがにアダプターは用途が浮かばなくて買ってないです。

GPD WIN系と同じくショルダーボタン付きです。

キーボードとパッドはTHEオタクデバイスって感じでめちゃくちゃかっこいいです。

キーボードは印字されたキーマットにクリアのキートップを被せており、バックライトもあるので見た目はとにかく良いです。絶対的にキーサイズが小さくキー数も少ないので、キータッチ以前に文字が打ちやすいかというと文章打つのは無理ってレベルですが。Fn併用しないと記号打てないので、右手親指を使ってしまう右下じゃなくショルダーボタンでFnとかにしてほしかった気はします。

パッドに関してはスティックはマウス操作に最高です(ゲームはまだやってないんでわからないです)。スティックというより正確にはスライドパッド系で、クリック機能もあるので少なくともマウス操作においてはGPD WIN系のスティックより遥かに良いです。GPD WIN系とは逆で左がマウス、右がスクロールでした。右スティックがスクロールしてても右クリ誤爆するのでちょっと要調整な感じはありますが。


最後の1枚はハンドヘルドPC系の集合写真です。これ見るまでサイズ感わからんですよね。左上がGPD MicroPC、隣がGPD WIN 2、右下が初代GPD WINです。GPD WIN Miniは勝ってないですスミマセン…

というわけでPyraはこの中でもフットプリント最少です。だいぶ分厚いので初代GPD WINと比べた時に最小と呼んでいいものかは悩みますが。GPD WINシリーズもMiniで回帰しつつもジリジリと大きくなってはいるので、このフットプリントでx86 PCが出ることは多分無いでしょうね(Intel N100で誰か作ってくれてもいいのよ?)。

外観はこんなところ。


ソフトウェア(ただしほぼ触ってない)

最後にソフトウェアの話。ただまだ何に使うか?何ができるか?すら考えられてないので、OSインストールしただけです。

PyraにはデフォルトでOSはインストールされていないので自分でインストールする必要があります。そしてx86ではないのでそのへんのインストーラーisoから入れられるわけでもありません。

ただ、Pyra公式のDebianイメージは提供されており、マニュアルに沿ってSDに焼けば簡単にインストールできます。「install」がファイル名に入った方のイメージを焼いたSDを入れて起動すれば勝手に内蔵eMMCへのインストールが始まるので、ここはオタク的簡単ではなく掛け値なしに簡単です。

しかし問題はこのOSです。基本となるインストールイメージはbuster、つまりDebian 10となっています。めっちゃ古い。一方でbullseye(11)と最新のbookworm(12)のイメージもあるので問題ないようにも思えます。

が、どうやらbullseyeですらアンダーバーが打てないだとかそういうレベルの問題が解決していないようで、OSの完成度はかなり芳しくなさそうです。また、bookwormはinstallイメージがないのでSDをブートディスクにするか、手動でeMMCに入れる必要がありそうです(これくらいはオタク的簡単の領域ですが)。

可能ならもちろんbookwormを動かしたいわけですが、いきなりチャレンジするにはちょっとハードルが高く感じたのでひとまずbusterを入れており、bullseye/bookwormはまだ試せていません。

 

その後は写真撮ってこのブログを書くこととF1/WEC開幕戦とプロ野球視聴を優先してしまったので進展はありません。ワイモバイルのSIMを刺してもModemManagerからGUI設定できる範囲では接続できなかったのを確認したくらいです(えー)。

初期設定時はWebブラウザも入ってないくらいですが、Firefoxを入れて動かしたくらいだと重くて全然実用にならない感じです。2016年のWebは大丈夫だったんでしょうが、Webは際限なく重くなってますからねえ。素のFirefoxやChromeではなく、軽量ブラウザにアドブロック系拡張をゴリゴリにチューニングして入れるといった探求が必要そうです。

あと個人的にLinux自体はサーバーで常用してるんですが、Linuxデスクトップはそんなに詳しくないのでカスタマイズへのハードルが高いんですよね。なので入力周りとかサーバーには無い問題にぶち当たると結構手こずるという・・・GPD系にUbuntu MATE入れてたことくらいはあるんですが、それくらいなので。

またCortex-A15ということでarm64ですらなく32bitのarmhfなので、これもまた一般Linux知識(Arch Wiki知識とも言う)が通用せずできること探しの制約です。ラズパイOSが2年くらい前までarmhfだったので、そこから持ってこれるものはあるかもですが。


ブラウザが実用的でないとなると、やはりメイン用途はエミュレータでしょうか。私は世代的にPS1以降なのでPCSX ReARMedとか。PS2(PCSX2)は当然無理として、PSP(PPSSPP)くらいは動くんでしょうか?しかし最新のPCゲーすら積んでる現状でPSエミュに情熱を注げるかと言うとw


最後に

買えるとなったから買っちゃった、というわけで今後どう使っていくか見えずこのまま押し入れに埋もれそうなPyraですが、一つすごい特徴があります。

それはCPU/メモリ/eMMCを載せたSoCボードが別基板になっており交換可能である点です。つまり現代のARM SoCを載せたボードが作られれば現代仕様で蘇るということです。

もちろんプレオーダーすらさばけてない現状でその計画はまったく進んでいませんが、いつか新CPUボードを作るつもり自体はあるそうです。

ローンチスペックのPyraを手に入れるのに8年かかったわけで、新CPUボードが出るには20年くらいかかりそうですが、まあどうなるか見てみましょう。その前にEDか私が死んでしまうかも、という悲しいことを抜きにしても、その頃には5インチ液晶に耐えられない老眼になっている可能性はかなりありますが。


なにはともあれ、8年待ったかいがあるかというとハイと言うのは現実として難しいですが、普通はそこまで遅延すれば飛ぶということを考えれば、8年後にハードが届くという体験はおそらく二度とできない(=CPUボードが出るとは思ってない)ので、代え難い思い出が作れました!(やけくそ)

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