2024/08/09

Ninja e-1のランニングコストと、バッテリースペックから見るパワー制御

マイブームが一段落するまではNinja e-1ネタが続きます。ごめんね。

というわけで今回はEVっぽいジャンルの話です。前半ではガソリン車と比較したランニングコスト(エネルギーコスト)の話、後半では搭載バッテリーのスペックからe-boostその他の挙動を推測していきたいと思います。

 

電費の話


ガソリン代

ここではNinja e-1と近い125ccスポーツバイクと比較していきたいと思います。現行車ではヤマハのYZF-R125、スズキのGSX-R125あたりですかね?ネイキッドのZ e-1だと、それぞれの兄弟車MT-125GSX-S125に加えてホンダのCB125Rも入ってくるでしょうか。

ここでは、せっかくなので最も公称の燃費が良いYZF-R125で考えてみます。Ninja e-1では60km/h定地走行の航続距離が実際と近いので、これで見るとYZF-R125は驚異の61.1km/Lです。(エンジンとモーターの特性上、定地走行燃費とWMTCモード値のどっちがアテになるかは逆転する気がしないでもないですが、一旦考えないことにします)

電気代と比較できるよう、1000km走行あたりのコストで考えてみます。ガソリン代はなんとも言えませんが、150〜175円で考えてみるとこんな感じ。


めちゃくちゃに燃費が良いのでめちゃくちゃに安い計算になってます。もう別にこれなら良くない?感が・・・

 

電気代

さて本題の電気代です。Ninja e-1のスペックでは電力消費率と一充電走行距離の2つの数値が記載されています。バッテリー容量を加味すると微妙に一致しないところがあるのですが、計算しやすい電力消費率を使っていきます。

こちらは見慣れない単位で52Wh/kmですが、単純に1000km走行なら52kWh消費する、と考えればいいですね。これを単純に電気代に乗じたいところですが、EVの場合は充電時のロスがあるので考慮が必要です。充電器の型番でググったらEfficiency > 90%というpdfがあったので、一旦効率90%と考えて、1000km走行に57.8kWhの給電が必要、とします。


では電気代はいくらか?これはいくつかのシナリオ(契約)がありますね。東電の関東向けプランのうち以下の3つについて考えてみます。

  1. スタンダードS従量電灯B
  2. スマートライフS
  3. アクアエナジー100

スタンダードSと従量電灯Bの違いは自由料金か規制料金かという点ですが、2024年時点ではどちらの料金も同等です(色々あって2022〜2023年頃は違いましたが本題ではないので割愛)。関東以外でも提供されているので、東電で普通に電気を使うだとこれになるんじゃないでしょうか。多く使う人向けにプレミアムSというプランもありますが、今回の計算では微差になるのでパス。

スマートライフSはオール電化向けプランで、自分が現在オール電化住宅に住んでいる関係で実際契約しているのはこのプランです。

アクアエナジー100は水力発電の電気を使った「ことになる」プランです。本来意識高い人向けの割高ネタプランだったのですが、やはり色々(※燃料費調整を定義上入れられない)あって通常プランより安いという逆転現象が起きています。ただしそのせいで現在新規契約できませんが。そして何より建前上「原油燃やした電気で走るのではなく水力発電の電気で走っている本当のゼロエミッションEV」と言い張ることができます!w


レギュレーションを説明します。各料金プランはそこそこに複雑ですが自分をモデルケースとして考えます。使用量が増えるにつれて単価の上がるプランもありますが、私は「オール電化住宅で毎日電気給湯器が稼働」「パソコンオタクで複数のサーバーが24時間稼働」「毎日自宅勤務で1日中エアコン稼働」とおおよそ電気代にとって最悪の環境で生活しているため、まず月間使用量が600kWhを割りません。というわけで、充電コストは最大単価で計算します。

次にスマートライフSについてですが、こちらは電気給湯器を想定して深夜(1〜6時)の料金が割り引かれます。前回説明したように起きている間にバッテリーを1つ満充電しもう1つを寝てる間に充電する運用をしているので、片方を日中料金、片方を深夜料金で充電している計算にします。

電気料金の計算にあたっては燃料費調整単価を考える必要がありますが、激変緩和措置を除いた場合ここ1年が -5.64 ~ -6.37円の間に収まっていたので -6円で考えます。激変緩和措置は一時的なものなので考えません。

燃料費調整単価はだいぶナマモノなパラメータですが、ここが値上がってるときはガソリンも値上がっているはずなので、差額はそんなにブレないでしょう。


説明が長くなりましたが結果がこちら。単価に先程の57.8kWhを乗じます。


どうでしょう?ガソリンより安い、というのは間違いなさそうですが劇的に安くはない、という感じもしますね。ただ、YZF-R125は相当燃費が良い計算になっており、e-1でガソリン換算すると90〜100km/Lくらい走るのと同等になるのでだいぶ良くは見えます。

ここでちょっと面白い表を。

先ほどのYZF-R125における走行コストに、ガソリン税53.8円を抜いた場合のコストを併記したものです。だーいぶ似たり寄ったりな数字になりましたね???

別に税制を批判したいとかそういう話ではなく、税金抜いた純粋なエネルギーコストってそう変わらないんですねっていう。今はEV推進もしてますしそれでも大して売れてないのでお目こぼしでしょうが、EV普及率が数十%とかになったら充電税とか導入されて実際似たり寄ったりのコストになっちゃいますよね多分。

まあ直近では、スマートライフSで安価に夜間充電しつつ激変緩和措置で更に安くなるのでもうほとんどタダ乗りみたいなもんです。125ccなんて普通のガソリン車でもタダ乗りみたいなもんだけど。

 

元を取る?

「EVは高くてもランニングコストが安い!」みたいな言説ありますよね。ハイブリッドの頃にもあったか。いやもう前節で結論見えてますけども。

Ninja e-1にはガソリン車バリエーションがあるわけではないので、東京都で得られる12+46=58万円がEVプレミアムだと考えてみます。価格106.7万円から58万円引けば48.7万円、GSX-R125が45.3万円でYZF-R125が55万円なんで割と妥当かなと。

先ほどの計算よりざっくり1000kmで1000円安いとしましょう、というか1km1円ですね、58万円を回収するにはそのまま58万km乗ればOK!w 無理ですね、そもそも1日乗れて50kmだし。

まあランニングコストで元を取りたくてNinja e-1を買う人はどう考えてもいないでしょうが、元が取れないなら車両価格でそのまま判断するしかないわけで、ZX-25RやNinja 650が買えてしまうこの価格は絶対EV推しでない限りやはり厳しい。でなければ富豪。そりゃ補助金要るよなと。

幸い東京都だと完全に125ccクラスの出費に収まるので、単純に「EV面白そ〜」という興味本位だけで買えて楽しめていますが。

金の話ばかりしていてもしょうがないのでそろそろ別の話に移ります。


e-1のバッテリー

 

各モードでの出力推定

e-1にはForsee Power社のGO 1.6 Powerというバッテリーが2つ積まれています。このバッテリーのスペックを見ていきたいと思います。

製品ページでは50.4V・1.52kWh・peak power 6kWということくらいしかわかりませんが、フォームから請求できるデータシートには色々なことが書いてあります。その中で走行性能に関わるのが以下の点。

  • ピーク出力 : 120A (10秒以内)
  • 継続出力 : 60A

まず継続(Continuous)での60Aです。50.4Vなので3kW、2つで6kWです。時間制限無しに出力できるのはこの値になるので、ROADモードでの出力はここに制約されていそうです。じゃあROADモードは6kW出てるのか?というとちょっと自信が無いです。海外仕様の定格出力が5kWなので※、他モードのスピードの出方との比率で考えるとこのあたりのような気もしています。
(※国内仕様は原付二種に収める都合上0.98kWというデタラメな定格出力になっている)

 

そしてピークでは2つ合わせて12kW出力できるということになっていますが、e-1の最大出力は9kWとなっているので、限界まで引き出していないようです。12kWだと最大10秒ですが、e-boost時の出力を9kWとすることで15秒は使えるようになっているのでしょう。

また、GO 1.6 Powerではありませんが別仕様であるGO 1.6 Energyのデータシートではピーク出力を出せるのは充電量40%以上となっています。Powerでも同様だとすると、やはり9kWとすることで残35%まではe-boostが使えるようになっている、に繋がっていそうです。


今度はECOモードについて。バッテリー1個でも走れること、回生の挙動からしてECOモードは1バッテリーのみから電力を引いているという推測です。とすると、ECOモードでの出力は2.5〜3kW、ECOモード + e-boostは4.5kWなんじゃないかと。低すぎないか?という数字ですが、EVだとこれでも低回転域で十分なパワーが出て、高速域でまったく伸びないという特性にはまあまあ一致している感覚です。

ECOモードが2.5kWだとしたら原付スクーター未満じゃん、というところなんですが、原付の全開動画とか見ていると実際そう感じます(原付に乗ったことはない)。

ということで推定としてはこんなところでしょうか?

  • 9kW : ROADモード + e-boost
  • 5kW : ROADモード
  • 4.5kW : ECOモード + e-boost
  • 2.5kW : ECOモード

こうなると、フル12kW出力・10秒の真e-boostとか欲しかったですね。実際はEUのA1ライセンスが最高11kWでこれが縛りになると思われるので、11kW出してくれれば同様に11kWの他の125cc勢と揃ったんですが。


3バッテリー仕様が欲しかった

さてデータシートにはもう1つ面白いこととして「Up to 3 batteries in parallel」ということが書いてあります。3バッテリーまでは並列動作できるようです。

e-1、3バッテリー仕様だったら面白いと思いませんか? 3つ積めばContinuousで9kW、つまり今のe-boost状態で常時走れます。更にe-boostして14kWとか、バッテリー2個使いのECOモードで6kWとか夢がありません? A1ライセンスからはみ出てしまいますがそこは欧州仕様e-boostは11kW・30秒とかに弱体化してもらって・・・

航続距離も単純に1.5倍とはいかないまでも70〜80kmくらい走ってくれればだいぶ行けるところも増えます。

フレームが難しいかもしれませんが何とか3つ詰め込めるんじゃないかなとは思うんですよね。バッテリー増やして、モーターや配線強化して160kgくらいでなんとか。バッテリーのパーツ代が34.1万円ですが、Honda Mobile Power Pack e:の価格などと比べると部品扱いだから割高な感もあるので、モーター強化と合わせて140万円くらいで市販して補助金70万円くらいついて70万円くらいで買えるなら・・・とか思ってしまいます。

まあオフボードコネクタ無いと充電運用が相当面倒になっちゃいますけどね。


というわけで今回は電気の話でした〜

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