昨日、こんな記事が。
VAIOが高性能タブレットを開発中、10月にも試作をお披露目
来年登場予定の新VAIOに関するニュースですね。これだけだと大した情報ではないですが、前々からVAIO株式会社とそこから出る新VAIOについて思うところはあったので、この記事をきっかけとして書いてみようかと思いました。特に、後半では新VAIOについて、現段階で得られる情報をまとめて考察してみました。後半自分でもバカかと思うくらい長いです。
まず、VAIO株式会社について。
近年のVAIOは尖った独自路線の高付加価値モデルがないがしろにされ、粗製濫造の安物PCがラインナップの中心になっていたのを苦々しく思っていたので、そちらを放棄して独自路線に注力する、というVAIO株式会社の方針は心から歓迎しています。VAIO事業切り離し決定直後の記事をはじめとして、各種媒体において安物PC乱発がVAIO事業の死因だと書かれていたので、ただのPCオタク(自分)視点から見て「ダメだな」と思っていたことが本当にダメだったわけです。
一方でVAIO株式会社が軌道に乗るというのもかなり難しいという現実も理解しています。ソニーという大企業から「捨てられる」状態にある組織が、更に大企業のスケールメリットまで失って順調に事業を継続できるというのはちょっと想像しがたいことです。まして、同業のLenovoに売却されたThinkPad事業ならともかく、VAIOの譲渡先はファンドなわけで、人的・技術的リソースは減りこそすれ増えることは絶対にありません。資金面でプラスがあるかどうかさえ定かではない、というより普通に考えれば無いでしょう。
しかし、高付加価値モデルに注力するというVAIO株式会社の方針が当たり、本当に魅力的な製品が出て売れていく可能性もあるわけです。VAIO株式会社が生き残る唯一の道として選んだのがその路線です。そうなった場合、生き残れないのはソニーということになります。VAIO株式会社が失敗し潰れ、「どう転んでもVAIOは死んでたね」となったならともかく、復活を遂げたとしたら「ソニーは成功する人材・技術を持っていながら飼い殺していた」ということになるのですから、切り離さなかった他の事業を含めてもうソニーに未来は無いということになります。
VAIOが消えるのも、ソニーが消えるのも嫌ですが、どちらも順風満帆に存続する未来は見えません。VAIOが潰れるか、ソニーがただの金融会社に転落するか、その両方のどれかだと思います。
さて、そんなVAIO株式会社の新機種についてです。先述の通り、VAIO株式会社がスタート時点でかなり厳しい状況に置かれているのは議論の余地が無いと思います。そんな中、新会社最初の完全新規モデルとして出すVAIOには社運がかかっていると言っても過言ではないと思います。なにせ、新規モデルが「外れ」だったときに、次の「当たり」が出るまで何事もなく過ごせるほど余裕のある会社ではありません。よもや1年で会社ごと潰れるとまでは思いません
が、更なる体制縮小などのダメージが出て、軌道に乗るまでの期間が延び延びになってしまうだろうな、くらいは思います。なので新規モデル
は「必中」が義務付けられるわけです。
で、どんなのが出るんだろうかと。
情報としてはいくつか挙げることができます。まず、冒頭の記事での「tablet PC」と「desktop class performance in a portable form factor」。 タブレットPCというとかなり広義ですが、少なくともタッチパネルは確実に付くし、タッチパネル搭載VAIO Proみたいなフォームファクターをいちいち「タブレットPC」と呼称はしないでしょうからVAIO Tapのようにキーボード非搭載かVAIO Duo/Fitみたいな2-in-1になるはずです。desktop class performanceを謳う以上いくらなんでもAtomではないわけで、最低限Core Mになるでしょう。portable form factorに関しては情報ゼロですね。クリエイター向けイベントにおける宣伝文句なので、Surface Pro 3クラスのサイズ(12インチ)だとしてもポータブルと呼ぶでしょうし。
次に、CPUに関する情報として。
新VAIOは“次世代プロセッサ搭載PCの完成形”を目指す――関取社長ロングインタビュー(7/23)
「次世代プロセッサを用いたWindows PCの完成形」を目指していると書かれています。これだけでも「Core Mかな?」と思います。また、「製品の投入時期に関しては、我々だけでは解決できない部分(キーコンポーネントの出荷タイミング)もありますので、現時点ではなんとも言えません。」とありますが、この期に及んで2015年初頭の出荷タイミングすら明白でないキーコンポーネントなんて絶賛炎上中のCore M(というかBroadwell)くらいしか浮かびません。そもそも「Core Mなんでしょ?」という質問が投げられてる記事中で、注釈として「記事初出時、今後発売されるVAIOが搭載する次世代プロセッサについて言及がありましたが、VAIO株式会社から現時点で仕様は未定との連絡を受け、一部発言を修正しました」なんて書いてあるくらいなので、多分Core Mの話をしていたんでしょう。ただ第5世代のCore i系もCore Mと同じBroadwellとしてスケジュールが炎上しているので、Core Mを積むと断言はできませんが。
次にフォームファクターについて。
「これが新しいVAIOです」――ソニーPC事業の失墜と新会社に求められる新たなVAIOブランドの確立(2/20)
VAIO株式会社そのものについて書いた前半部分で引用した、VAIO事業切り離し決定直後の古い記事ですが、「2014年後半に向けて開発中の新シャシー(VAIO Fit Aに近いマルチフリップスタイルの薄型・軽量機とのウワサ)」と書かれています。VAIO株式会社設立前の記事で、ソニー時代に開発されていた機種を新機種として設立時に発売する、という旨の文章なので、それ自体は実現しなかったわけですが、このコンセプトが独立後の新規開発モデルにも引き継がれているとしたら重要な情報になるわけです。
また、
いま、新生VAIOのすべてを語ろう!【後編】(8/19)
この記事では、「次期商品は複数機種になる可能性がありますが、その中で、安曇野で生産するといったものが存在する」「今のVAIO Pro 11/13と競合するような商品は出さないことは明らか」という発言があります。前者については「いくつ出すか」という点で重要です。過去の高付加価値モデルとしてのVAIOは、年に1,2台完全新規モデルが出るくらいのペースだったと思います。低価格帯製品の開発を完全に放棄したにし
ても、高付加価値モデルの開発にかかる時間、ソニー時代より減ったリソースを考えれば次に出せるのは1機種、良くて2機種が限界でしょう。「その中で、安曇野で生産するといったものが存在する」という点を踏まえれば、安曇野生産が1機種、VAIO Pro式のODMが1機種といったところではないかと思います。VAIO Proの完成度を考えれば後者も期待できますが、やはり本命は前者かな?と思います。
また、VAIO Proと競合しないというのも重要な情報です。11/13インチの2モデルが存在しタッチパネルの有無まで選べるVAIO Proのカバーレンジは広いので、ここと競合しないというのはかなり絞られてきます。まあ、「競合」をどの程度の近さで捉えているかにもよりますが・・・なにせ、末期のソニーVAIOは「13インチ・フルHD・タッチパネル・Core i」でPro/Fit/Duoの3モデル、「11インチ・フルHD・タッチパネル」でPro/Fit/Duo/Tapが競合するという惨状でしたので(VAIO Fit 11AとVAIO Duo 11は同時期に売られてないですが)、ヒンジが違えば競合しない程度に思っている(思っていた)可能性はあります。そりゃ潰れるよね・・・
もう一つ重要だと思ったのが以下の記事。
VAIO執行役員 花里氏「VAIOが始まった当時に戻った感じ」
「まずは、王道でないといけないかなという気がしています。VAIO Type Pみたいな『小さいの』は飛び道具的なものですよね。あとVAIO
Duoのような『スライダー』のもの、これもかたちが新しく変化しているということで、ある種の飛び道具。あと、たとえば、『VAIO Tap
20』も『家族で使って欲しい』みたいなところで、飛び道具」私の愛するtype Pが飛び道具扱いです。いや、明らかに飛び道具ですけどw 「うーん、やっぱりVAIO Type Pは人気ですね」というあまり前向きでないトーンの発言から考えても、type Pみたいなイロモノで博打かける余裕はない、という感じは伝わってきます。残念ですが。
さて、これらの情報をまとめてみると以下のような感じでしょうか。
・AtomではなくBroadwellで、Core Mの可能性が高い
・タブレットを名乗れる形状の2-in-1PC
(よもや誰でも作れるスレートではないと信じてるので、2-in-1としておきましょう)
・VAIO Pro 11/13と競合しないセグメント
(個人的な感覚だと例えばSurface Pro 3とかだと凄い競合しそうですが、「クラムシェルではない」程度の意味しか無いかもしれません)
・飛び道具的でない、王道PC
これらの条件を踏まえて考えてみると、新VAIOの姿が・・・見えてきませんね。2機種くらい出る雰囲気はあるので、2-in-1っぽいという話と飛び道具ではないという一見矛盾する話はそれぞれ別の機種にかかっているのかもしれません。
「クラムシェルじゃなければVAIO Proと競合しない」理論でいくと、Core M搭載のスレートというのが(近年の)王道タブレットPCになるわけですが、そんなのただのCore Mリファレンスでしかないわけで、さすがにそんなPCではないと信じたいです。
あと、王道となると真っ先に浮かぶのはVAIO Zですが、Core MのセグメントでもなければタブレットPCでもなくVAIO Pro 13との競合もあるので難しいところです。
これだけ情報を並べて結局よくわからなかったわけで、多分上に挙げたどれかの要素は変更や破棄された結果が冒頭の最新情報に結びついているのでしょうが、個人的には「王道」の部分を捨てて「VAIO type PサイズでVAIO FitスタイルのCore M搭載PC」に期待しておきたいと思います。
VAIO株式会社には本当に成功してほしいので、ぜひ「買い支える」気になるPCを出してほしいと切に願っています。EステッピングのCore M搭載PCには正直大したものがなかったので、他メーカーと横並びになるFステッピングCore M発表時に魅力的なPCが出せれば十分に勝機があると思います。ボーナスを年始まで塩漬けにしようと思わせるPCが10月に見られることを期待しています。
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