またもや「クラウドファンディングでUMPC」ネタ。GPD WINの成功(?)で二匹目のドジョウを狙う人々が増えたのか、UMPCに風が吹いてるのか・・・
KS-PRO & KS-PROID PhabTop Powered by Snapdragonということで、GPD PocketやGemini PDAとは別に、また新たに(スペックは)魅力的なUMPCが出てきたのでかるーく眺めていきます。
Khiron-Sigma?
さて、Khiron-SigmaなのかKΣなのかKS-PROなのかハッキリしろよというこのUMPC、まあKhiron-Sigmaが名前でKΣがロゴみたいなもんで、Windows版がKS-PRO、Android版がKS-PROIDという認識でよさそうです。
ブツとしては、8インチディスプレイのUMPCということで、正しい意味でのVAIO P後継と言えそう。後述するサイズもほとんど一致。
(GPD PocketとかGemini PDAとか、一回り以上小さい製品を「VAIO Pの後継!」と囃し立てるのは違うと思うんですよね。LOOX Uとかもっと近い製品は過去にあったわけだし。)
面白いのはSnapdragon 835採用を謳っている点。
「スナドラでWindows 10???Windows Phoneじゃなくて???」と混乱しがちなところですが、今年の後半にARM版Windowsが出る、という話は以前書いた通り。そして、Snapdragon 835が最初のARM版WindowsをサポートするSoCになるので、ある意味Windows 10のためのSnapdragon 835採用というわけです。
Windows on ARMのリリースが2017年末予定なため、同ハードながらAndroid版のKS-PROIDが11月発送予定のところWindows版のKS-PROは2018年1月となってます。これはむしろ妥当なところ。ファーストパーティになるSurfaceと同時に出せるわけもないし。
そうそう、こういうのをWindows on ARMに期待してたんだよ。
スペックとか
一言で言ってモリモリ。
8インチ(8.2インチ?)の2560x1440ディスプレイに8GBメモリ・128GBストレージ、10307mAhで12時間駆動のバッテリー、LTE・11ac・NFC・BT4.0・GPS・・・
とはいえトチ狂って盛りまくってるというよりは、ほとんど全てはSnapdragon 835に付随してくる機能だったりします(特に通信周り)。8GBメモリにしても、2017年後半のハイエンドスマホとして考えればおかしくもない。
Windows on ARMを載せる→Snapdragon 835しか選択肢が無い→必然的にモリモリになる、という図式。
Windows on ARMの現物が存在しない以上Windowsがどれだけ快適に動くかは未知数なものの、そこはMicrosoftとQualcommの仕事だし、「2017年末にARM版として出るであろう新型Surfaceと同等の性能」を持っていると考えれば十分でしょう。
(GPD WINがまさに「2015年に出たSurface 3と同等の性能」だったのと同じイメージ)
ディスプレイも大きめなことで画像のキーボードレイアウトも変態配列無しの完全なもので、これも非常に魅力的。バックライト付きだし。
「こういうのは日本人が釣れる」と味をしめたのか、日本語配列版も用意されています。実際現時点で日本語配列版の出資数が英語配列版の5倍くらい多いというビックリするような状況。自分ならそもそも英語配列版選ぶけど・・・
サイズに関しては24.6x15x1.6cmで640g。初代VAIO type Pが24.5x12.0x1.98cmで634gだったので狙ったと言っても過言ではないサイズ。
ともかく「出れば間違いなく良い製品」と言えるくらいのスペックは備えてます。
あ、トラックポイントが指紋センサーを兼ねてる=光学式なのは個人的にはダメだけどwラバーにしてラバーに。
いつものアレ
はい、というわけで毎度のアレです。「実際できんの?」っていう。
良さそうなところ
まず安心できるところは、「技術的にはほぼ確実に作れる」というところ。1点怪しいところはあるので後述。
要するに「中身がSnapdragon 835のスマホで、ガワがキーボード付きタブレット」というだけなのでハード的に非現実的なところはありません。スマホに(もちろんファンレス)で詰め込めるSoCなのだからこの厚さにも入るし、キーボードも付いてれば10000mAhオーバーのバッテリーも入るでしょう。
ソフトウェア面でも、Snapdragon 835で公式にサポートされるAndroidとWindows 10をターゲットにしているので問題なし。SoCにほぼ全てのハードウェアが搭載されているので、開発チームがドライバを書かずともQualcommとMicrosoftから提供されるもので事足りるはず。
ダメそうなところ
重箱の隅っぽいところから。まず先ほどの「1点怪しいところ」がディスプレイ。8インチだか8.2インチだかわからないですが、そのサイズで2560x1440なディスプレイが載ったデバイスを知りません。つまり部品として存在してるの?という疑問。
まあ知らないだけなので自分が無知なだけかもしれませんが、8インチオーバーは完全にタブレットサイズで、タブレットは通常16:10ディスプレイを搭載するので2560x1440=16:9な8インチクラスディスプレイが存在する・供給されるかは結構疑問。
逆にGalaxy Tab S 8.4のように8.4インチで2560x1600な16:10のディスプレイは存在しているので、そちらにアップグレードすれば解決する問題ではあります。そうすると今度は本体の奥行きを維持できないでしょうが。
もう一つは価格。Android版が$450でWindows版が$600となってますが、ハードが同じ以上$450で原価割れできないわけで大丈夫か?という。
(Windowsはライセンス分高い、のかもしれませんがこの分野での競争力を考えるとWindowsのライセンス料はほとんどゼロなんじゃないかという気がする)
なにせディスプレイやキーボードを抜きにしてもSnapdragon 835搭載なので、Snapdragon最上位モデル搭載スマホの価格を考えるとかなり厳しい気がします。Xperiaと比較するまでもなく、安い中華スマホだってざっと$300くらいするので・・・
市販価格は+$250とのことで、販売価格で考えれば異常に安いというほどではないですが、結構攻めた価格設定に思えます。
そして一番重大な点、彼らが作れる証拠がどこにもない。
完全にCGオンリーでプロトタイプどころかモックすらないので、ハードウェア製作能力を示すものが存在してないです。過去の実績も無し。
書かれている情報としては「元Microsoft社員によるスタートアップ」というだけで、さすがにこれだけでは何にもならないです。元トヨタ社員だからといって車作れるとは思わないですよね?
非常識ではないスペックと非常識ではないスケジュール、あとはなんというか雰囲気からして詐欺ではないように感じました。が、「やる気がある」と「できる」は全然別問題で、技術的に可能でもその技術が彼らにあるか、あるいは作れる人を引っ張ってこれるかは全然見えない。
現実的なところとして、コンセプトごと丸投げして設計&製造してくれるODMと契約を取り付けた、ということを示せないとちょっと実現するとは信じられない。逆に、「金は集めた。作ってくれ」というスタンスでも手を上げる(作れる)ところは結構あるんじゃないかとも思う。
というわけで
現状では絵に描いた餅、机上の空論、ベーパーウェアでしかないので、キャンペーン終了までに「作れそう」と思わせる何かが出てこないと到底手を出せない。もちろんそう思えれば即座に欲しくなる製品だけども。
最後に、それはそれとしてすごく共感したコンセプト説明の一部。
Unfortunately, technology limitations and the emergence of the tablet has caused today's companies to copy each other and not innovate in this space.
残念ながら、技術的な制約とタブレットの登場により、昨今の企業はお互いの製品をコピーしこの分野(UMPC)で革新を起こしませんでした。ホントそれな。前から散々思ってるけどタブレットに市場ごと駆逐されちゃったから・・・
We believe that it is time for a class defining UMPC to emerge, tablets do not let you create in the same way as a computer does,
私たちはタブレットではPCのようにモノ作りはできず、UMPCというクラスが(再び)登場すると信じています。ホントそれな。UMPCというよりPCの話だけれど、コンテンツの消費に特化したスマホ・タブレットにPCが駆逐され、コンテンツを生産する手段が一般人の手から離れていくのは本当に暗い未来だと思うんですよね・・・人間から可能性を奪うというか。
最後は脱線しましたが、とりあえずキャンペーン終了までコソッと覗いていこうと思います。
UMPCファンとして,いつもブログを楽しく拝見しています.
返信削除>そして一番重大な点、彼らが作れる証拠がどこにもない。
私もここがGPDとの違いだと思います.GPD WINの時は,AndroidながらもGPD XD系のモバイルデバイスを開発していたわけで,それなりの能力がある開発部隊を持っていることが分かっていたので,「多少の仕様変更があるとしても製品化は可能だろう」と考えて出資できました.特にPocketはWINの実績もあって出資者の集まる速さが凄かったように感じます.
PGSにしろ今回の企業にしろ,スタートアップゆえに実績がないのが苦しいです.(出資状況もGPD WIN/Pocketのようには行っていないようです.)
Arm版Win10も色々な意味で未知数ですし・・・発表されている仕様が良すぎるのもちょっと不安です.
私もコンセプトには強く共感できましたが,動いているプロトタイプが出てきたら出資しようかなと考えています.
android版ポチりました。
返信削除ハイスペックのandroidタブレットって
全然出ないんでないんですよねえ。
残念なことに、5月でキャンペーンが中止されてますね…。
返信削除やり直すつもりはあるみたいなので期待はしたいところですが。