前回「一代限りの復活」と称したGPD WINのお話です。
あらまし
まず、GPD WINは普通に発表された製品ではなく、Indiegogo上でのクラウドファンディングとして始まった製品です。2月末にIndiegogoでクラウドファンディングが始まる前から計画はされていたようですが、知ったのは2chあたりでIndiegogoのページが貼られていたのを見てからです。
GPDは元々GPD XDといったゲーム特化型Android端末を作っている香港の会社で、次期製品としてWindows搭載ゲーミングハンドヘルドを作る、ということで企画されたのがGPD WINのようです。
クラウドファンディングという形ではありますが、GPD自体ある程度製品の開発販売実績のある会社で、元から「目標額に到達しなくても製品化予定」と称していました。そのため、(個人的な推測ですが)足りない製造資金を集めるためというよりは、宣伝、あるいは初期ロット生産数の観測気球としてクラウドファンディングという形態を利用したんじゃないかなと思っています。
希望小売価格$499のところ出資額$299で1台入手可能ということで金額的にもかなり魅力的なものでした。中国製品が希望小売価格で売られているのを見たことはありませんが、それ以前に$299は衝撃的な安さでした。10万、20万かけて小型のVAIOやLOOXを買っていたんですから・・・
Vita派でDSを持っていない自分ですが、電車で3DS LLを見かける度「このサイズのPCがあればなぁ・・・」といつも思っていた折、そのものずばりのPCが企画されたわけで見つけたその日には出資していました。企画先行で失敗も多いクラウドファンディングですが、実績のあるGPDのものということで安心感もありました。目標額10%もいっていなかった頃です。
ともあれ、出資募集は約2ヶ月でしたが、3月上旬にはあっさりと目標額に到達し、募集終了時点で53万ドル以上の出資金を集め大成功しました。
ちなみに、タイムリーな話としてつい先日日本のMakuakeでも予約が始まりました。もう限定数は完売していますが、今後追加販売&定価での通常販売も行うようです。
しかしながら、開発中の製品ですので目標到達即発売ではなく、発売は早くても10月です(そしてこの手のプロジェクトはほとんどが遅延する)。クリスマスプレゼントになればいいかなくらいには思っていますが、なにはともあれ待つ時間が長いわけです。GPD WINが到着するまでのやり場のないリビドーをぶつけるためだけにこの文章を書いていると言っても過言ではないですw
というわけで、GPD WINの魅力をぐだぐだと語っていきたいと思います。
サイズ
何よりも魅力的なのは、言うまでもなくそのサイズです。155mm x 97mm x 22mmというサイズは、156mm x 93mm x 22mmのニンテンドー3DS LLとほとんど変わりません。過去に同じくらい小さかったWindows PCは工人舎PMことUMID mbook M1くらいです。
このサイズに5.5インチ・1280x720のディスプレイが搭載されています。工人舎PMのディスプレイが4.8インチだったことを考えると素晴らしいです。LOOX Uの5.6インチディスプレイとほぼ同じサイズです。もちろんマルチタッチ。
720pはイマイチ物足りない気がしますが、実際のところ5.5インチで720pは経験上ドットバイドットで使うにはほぼ限界近いので問題ありません。1080pだったとしても150%拡大して720p相当で使うのがオチで、綺麗になりこそすれ表示領域はこれ以上増やしようが無いと思います。LOOX Uのように5.6インチで1280x800あれば、縦が768を超えていてなお良かったとは思いますが。
重量も300gと異様に軽いです。初代LOOX Uの半分強です。3DS LLよりも軽く、バッテリーが6000mAhということを考えると驚異的です。冷却系が簡素だったりするのかもしれませんが、むしろここまで軽いと色々大事なものが入ってない気すらしてきますw 中華製品の常を考えると、実際はもう何十gか重かったということはありそうですが、だとしても充分に軽量です。
バッテリーが大容量6000mAhということで、公称6-8時間の駆動時間を謳っています。最近のAtomは本当にバッテリーの持ちが良いので、駆動時間に悩まされることはほぼ無さそうです。まして、USB充電が可能なためモバイルバッテリーで動かすことすらできます。
スペック
スペックも、普通のノートPCやタブレットからすると普通かもしれませんが、低スペCPUに苦しんできたUMPCマニアとしては垂涎もののハイスペックです。
CPUは当初Atom x5-Z8500とアナウンスされていましたが、後に新ステッピングのx5-Z8550への変更が発表されました。VAIO PやLOOX Uに載っていた初代Atomと比べるとざっと4,5倍くらいは速いです。初期UltrabookやMacBookAirに載っていた低電力版Core 2 Duoくらいの性能は全然あると思います。
6/5追記:Z8500に戻った可能性があります。記事
6/6追記:Z8500に戻ったようです。記事
GPUはBroadwell世代のかなり新しいコアですが、正直このあたりはどれくらいの実力かわかりません。ただ、「どれくらい重い3Dゲームまで動かせるか」が議論の的になる時点で、そもそもAeroが厳しかった時代のAtomとは比べるまでもなく高性能です。
メモリは4GB搭載しています。このPCのスペック的に8GB必要になる場面はほぼ無いと思うので4GBは必要十分、そして2GBより明らかに優位です。
4コア・4GBとなると仮想マシンのLinuxに2コア・2GB割り当てることすら考えられます。UMPCで仮想マシンなんて信じられないですが全然現実的です。
自分自身、x5-Z8500、2GBメモリのXiaomi Mi Pad 2を持っていますが、ブラウジングやOfiiceといった基本的なことなら軽快に動作します。Firefoxは若干重さを感じますが(Edgeが滅茶苦茶軽い)、ブラウザは得てしてメモリ食いなのでGPD WINでは4GBメモリが効いてくると思います。
ストレージはSSD64GBです。eMMCなのでSATAと比べると速度的には期待できませんが、それでもこれまでのUMPCで最も高速なストレージであることは言うまでもないです。
何はともあれ、Atom Z5x0で止まっていたUMPCの歴史で考えると、Windows XPがサクサク動かせた最後のWindowsだったわけで、Windows 10が過不足なく動くことは革命的と言えますw
入力インターフェース
GPD WINを最も特徴付けているのが入力インターフェースの豊富さです。小さい筐体ギリギリのサイズにキーボードを詰め込むという発想を捨て、親指タイプギリギリのキーボードに小型化することで豊富なボタン・スティックを搭載しています。
何よりこれは、元来GPD WINが純粋なUMPCではなくゲーミングデバイスとして立案されていることに由来します。ゲーム、特にコンソールゲームをエミュレーターで満足に遊ぶにはゲームパッドが必須なので、非常に力が入っています。むしろキーボードがオマケです。
面白いのが、このパッドがマウス操作も兼ねている点です。スイッチでマウスモードに切り替えることで、右スティックをカーソル移動、L1/L2ボタンを左クリック、R1/R2ボタンを右クリックとして使えます。このため非常に両手持ちで使いやすい操作体系になっています。むしろクリックボタンが両肩にあるため、机に置いて使うのは難しい感じですが。
個人的には、マウスモードではなくパッドモードで各種操作を割り当てると面白いんじゃないかなと思っています。パッドはDinput / Xinputに対応しているので、おそらくJoyToKeyでカーソル移動やクリックを割り当てられるはずです。
できるかどうかはわかりませんが、以下のようなことをしたいなーと思っています。
- 置いて使う時用にABXYにクリックを割り当て
- 左スティックに上下左右スクロールを割り当て
- L1/R1をクリックとし、L2/R2に戻る・進むボタンを割り当て
- 片手(右手)で使う用にR1に左クリック、R2に右クリックを割り当て
拡張性
拡張ポートは豊富と言うほどではありませんが、必要なところを押さえています。
充電は当初MicroUSB 2.0でしたが、最近Type-C 3.0への変更がアナウンスされました。フルサイズUSB3.0も付いているので、USB3.0が2系統ということになります。何せ代替機がしばらく出そうにないので、近々時代遅れになるMicroUSBではなくこれから普及するType-Cになったというのは非常に嬉しいです。
また、MicroSDスロットも付いているのでストレージの拡張も可能です。128GBのSDXC対応を謳っているので、恐らく256GBの製品も発売されれば利用可能でしょう。GPDによればUHS-Iも対応しているとのことです。実際どれくらい速度が出るのかは気になるところです。
映像出力としてはMicroHDMIも付いています。DisplayPortを載せられるSoCではないですし、4Kを扱う性能も無いのでHDMIがあれば必要十分でしょう。
自分としてはMicroSDからのブートに対応していると嬉しいですね。高級MicroSDは初期のSSD程度の速度は出るので、ここにUbuntuとかインストールできるとかなり夢が広がります。
通信
通信モジュールは802.11ac+BT4.1です。こちらも当初11n+BT4.0予定だったものがアップグレードされました。
LTEが無いのは海外製品なので仕方無いとはいえ残念なところですね。テザリングやモバイルルーター、あるいはPIX-MT100のようなUSBドングルを使うのもアリかもしれません。
海外製品について回る技適問題ですが、国内総代理店が付いたことで国内分に関しては解決しそうです。また、Makuake出資者のブログによると、Indiegogo出資分についても技適問題はクリアされている可能性が高そうです。なんにせよ、気になる方は国内代理店経由で購入すれば問題ないでしょう。
まとめ
総じて隙の無いUMPCと言っていいんじゃないでしょうか。今まで挙がっていた要望点としては、
- 最上位Atomであるx7-Z8750の採用
- メモリ8GB
- SSD128GB
- もう少し大きくて中央寄りのキーボード
- キーボードバックライト
- ウェブカメラ
- LTE
- フルサイズSDXCスロット
- 取り外し可能なバッテリー
また、メモリ8GBとSSD128GBについては、初期版GPD WINの売れ行き次第では上位モデルとしての発売を検討しているらしいので、こちらは期待したいところです。出ればもちろん2台目として買います。むしろ、最初から2台買いのつもりでしたが上位版の可能性を踏まえて1台だけ出資していますw
上位モデルの構想はあるとは言え、出ると決まったわけではないですし、また前回書いたようにGPDにはどうにもならないIntel側の事情で後継モデルが世に出ることはないでしょうから、この手のジャンルに興味があったら逃す手はないと思います。
現状、IndiegogoのIn DemandもクローズされMakuakeの出資も終了してしまっているので、購入するにはGeekbuyingのPresaleしかありません。ただ、Makuakeについては追加が検討されているようですし、来春には一般販売も始まるようです。来春とは気の長い話ですが、恐らくこれから10月にかけて何らかの形でプレオーダー・早期入手できる機会があるんじゃないでしょうか。
もちろん、10月になれば(私を含め)各所でレビューが出るでしょうから、それを見てから購入するのもアリだとは思います。自分は待ちきれませんが・・・
毎度オチの付け方が浮かばないのですが、2010年に購入したLOOX U/G90が最後のUMPCとなってから6年待って出会えた、待望のUMPCのお話でした。いやまあ、まだ手に入ってないんで最終的に6年半くらい待つ必要があるんですが・・・
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