2016年6月9日木曜日

DragonBox Pyraについて考える

ここ数日はGPD WINの話でしたが、今度はそろそろDragonBox Pyraの話でも。

ということで、この前GPD WINと共に紹介したPyraの話です。ただし、GPD WINとの比較的な部分については別途書きたいと思っているので、そのあたりは最小限です。

この記事で使っている画像は公式サイトのプレスキットより拝借しています。レンダリングでない実写画像は開発中のプロトタイプのもので、製品版のカラーリングは未定です。(プロトタイプが半透明なのは動作確認用で、製品版がこうなるわけではありません)

あらまし


Pyraは今年登場したプロダクトではなく、OpenPandoraというLinuxハンドヘルドの後継機としてここ2,3年開発が進められていた製品です。かつてOpenPandoraという製品があったこと、後継機が開発中であること、くらいは知っていたもののあまり追っていなかったので、Pyraの状況についてはGPD WINを知った後に「Pyra界隈でGPD WINが話題になっている」経由で追いついた形です。

Pyraの最大の特徴は、Intel x86ではなくARM CPU搭載のLinuxハンドヘルドである、という点です。Linuxは動いてもWindowsは動きません。しかし、Androidではない普通の(と言うと語弊があるかもしれませんが)Linuxディストリビューションが動作します。

開発しているのはドイツのDragonBoxというところで、無名というか(紆余曲折あったOpenPandoraはさておき)事実上Pyraを開発・販売するための会社です。性質的には同人ハードと言っていいのかもしれません。ちょっとこの響きに拒否感を示す人もいそうですが・・・

一般的なクラウドファンディングサイトではなく、DragonBox内のショップで現在プレオーダー受付中です。製品の代金ではなく、製造に必要なコストを頭金として支払う形式になっています(※割引価格ではなくあくまで頭金であって、出荷時に追加支払が必要です)。

最終価格は現代の水準だと正直言って高いです。後述する通りいくつかスペックが分かれていますが、なんにせよ€500〜€630の価格帯です。ドルではなくユーロです。送料もバカにならない額かかる可能性があるので、75,000円〜90,000円程度の出費が必要になります。

プレオーダー受付中であるものの、発売時期は未定となっています。開発の進捗次第ですが、プロトタイプは完成しているので大幅に遅れることはなさそうです。現状だと最短で9月、少なくとも年内、という感じなのでGPD WINと大体同時期になるんじゃないかと思っています。

現在、初期ロット製造に必要な最低受注数は確保したとのことで、クラウドファンディング的な意味では目標到達していると言えます。もう何十台か予約が集まると初期ロット台数を増やせる=多くの人に初期ロットを届けられる、という状況のようです。

DragonBoxは小さい会社であるため製造資金がなく、しばらくは「プレオーダーで最小ロットの製造資金を集める→発送」という流れで販売を続けるようです。合計で1,500台くらい(つまり6月上旬時点の2倍程度)販売できれば、手元資金だけで最小ロットを製造できるようになる=プレオーダー無しで在庫販売ができるようになるらしく、ひとまずはそこを目標にしているようです。

丁度GPD WINのクラウドファンディングが開始された頃はプロトタイプ製造が佳境に入るところで、「そういえばこんなものも開発されていたよな」くらいの認識だったのですが、5/1からプレオーダーが始まり、熱に呑まれて予約してしまいましたw

そんなARM CPUのキワモノUMPC、Pyraの魅力をぐだぐだと(ry

サイズ


強烈な印象を与えるのが、とにかくコンパクトな筐体サイズです。写真の通りPS VITAより遥かに小さく、139mm x 87mm x 32mmというサイズは大体(LLじゃない)ニンテンドー3DSと同じくらいです。iPhone 6sと長辺がほぼ同じ、と書いてもヤバさが伝わるかな?さすがにここまで来るとx86 UMPCで比較になるようなものが無いレベルです。x86で無理するとF-07Cみたいなことになっちゃうし。

このサイズに押し込める限界近い5インチ・1280x720のディスプレイが搭載されています。個人的な経験としてはLinuxはHiDPIのスケーリングに難アリなので、むしろこれ以上の高解像度は不便でしかなく、720pはベストだと言えます。

感圧式タッチパネル搭載なので、付属のスタイラス(というかただの棒)でも指でも使えます。静電式の方が今風ですが、このサイズにもなると爪タッチできる感圧式の方が便利そうです。

フットプリントの驚異的な小ささに対して、厚みは32mmなので結構、というかかなり厚いです。これは着脱式バッテリーや後述のSDXCスロットなどてんこ盛り仕様なので致し方ないところかもしれません。ジーンズのポケットには入りますが、入れっぱなしで歩き回りたくはないイメージでしょうか。

着脱式バッテリーは6000mAhと大容量で、しかもx86より低消費電力なARMのため少なくとも8時間は稼働するようです。まったく不足は無いでしょう。モバイルバッテリーからMicroUSB給電で動かすことも可能ですが、むしろモバイルバッテリーとして使えそうな容量・小ささです。

重量に関しては確定していないようですが、かなり質実剛健な作りということもありプロトタイプで420gとこのサイズにしてはやや重いです。ただプロトタイプは色々と無駄な部品・基板があり軽量化の余地はあるらしいので、最終的にはもう少し軽くなるんじゃないかと思います(400gを切るくらい?)。

スペック


PyraはSoC・メモリ・eMMCがCPUボードとして分離されており、将来的な拡張に備えた設計になっています(拡張の見通しは明るくないですが)。現在は、OMAP5432というSoCが採用されています。

OMAP5432のCPUはCortex-A15 1.5GHzのデュアルコアとなっています。x86ではないため、このCPUの性能についてどうこう言うのは難しいのですが、Android端末で言うとNexus 10が近いものになります。

Cortex-A15は2013年くらいのハイエンドコアで、Cortex-A57・A72等が出ている昨今では古さは隠せませんが、A9から大きなジャンプアップを果たしたのがA15で、以降は順当に性能向上しているという形なので、それなりに優秀なコアです。例えば、現行ミッドレンジコアであるCortex-A53よりも高性能です。

近年のAndroid端末は4コア・8コアとコア数がインフレしているためベンチ上の数字ではデュアルコアは見劣りしますが、実用上はコア数が増えれば増えるほど増加の効果は薄くなっていくので、数字ほど差はないと考えられます。逆に、対シングルコアで考えるとデュアルコアの効果は絶大でしょう。

GPUはSGX544-MP2、つまりデュアルコアGPUで、GPUに関してはコア数がモノを言う領域なのでちょっと弱いかもしれません。参考になるかはわかりませんがAtom Z2560と同一のGPUです。個人的にGPU性能を重視しないので詳しくないのですが、Pyraがターゲットとしているゲームはどちらかというとエミュレーターなので、コア数に関してはそこまでマイナスにならないかもしれません(コアをフルに使うのはエミュではなく最適化された最新ゲームであるため)。

メモリは2GBと4GBを選択できますが、価格差が€30弱のためほとんどの人が4GBを選択しているようです。自分も4GBにしました。メモリよりはCPUがボトルネックになりやすいため2GBで大抵事足りるようですが、消費電力的なインパクトもほとんど無さそうなので多い方がいいよねと。メモリ食いのMinecraftあたりを動かした時に効いてきそうです。

ストレージは32GBです。Linuxが食う容量の少なさを考えるとまったく不足はない(16GBでも足りるくらい)です。動画・音楽等々のデータ領域はSDカードでいくらでも足せるので。

x86 CPUや最新Androidと比較すると、総じてパワフルとは言えない構成ではありますが、動作させるのがWindowsでもAndroidでもなく素のLinuxなので、サクサク動いてくれるんじゃないかと楽観視ししています。

OS


OSに関しては繰り返しになりますがWindowsではなくLinuxです。ARM版のDebian GNU/Linuxがプリインストールされます。組み込み系特化型ディストリビューションではなく、超ポピュラーなDebianなのが嬉しいポイントです(個人的にUbuntu等apt系の住人なので)。

ARM世界はカーネルレベルでデバイスに最適化しておく必要があるため、カーネルは専用のものが載るみたいです。逆に、カーネル以外はほぼ素のDebianを動かしているようなので、とてもいじりやすいんじゃないかと思います。

後述の豊富なストレージインターフェースにより、SDにOSを入れてブートもできるので、プリインストールのDebianをキープしつつ色々なLinuxを入れて遊べるんじゃないかと思います。個人的にはUbuntu MATEあたりを動かしてみたいですね。

入力インターフェース


多分Pyraの真骨頂がここなんじゃないかな、と思っています。物理キーボード+パッドという構成はGPD WINと同様ですが、スティックはクリック機能まで付いています。また、スティックに関してはPSPのようなスライド式で、マウス移動においてはこちらの方が使いやすそうです。

押し間違いの内容にABXYボタンを少し高くするなど、ボタン類についてはかなり拘っているようで、快適な操作性が期待できます。多くの記号キーがFn併用になっていますが、それと引き替えにキーピッチを広めに取り親指タイプに特化しています。

また、キーボードはバックライト付きという抜かりなさです。

パッドのボタンアサインについては、Linuxなのでxorgの設定をゴリゴリいじっていけばまあ色々割り当てられると思います(適当)。

拡張性


拡張性はとんでもなく高いです。ちょっとやりすぎと思えるくらい。USBだけでも、
  • MicroUSB 3.0 x1
  • 充電・デバッグ接続兼用のMicroUSB 2.0 x1
  • フルサイズUSB2.0 x2(1つはeSATAと兼用)
と4ポートもある変態ぶりです。Type-Cじゃないのが少し残念というくらいでしょうか。

特に、eSATA兼用ポートが驚きです。画像中の青いポートがそれで、アダプタを刺すことでUSB-SATA変換ではなくSATAプロトコルそのままSATAデバイスを繋げるそうです。USB3.0用の追加ピンをSATA用に使っているので、USB3.0ではありません。USB3.0を使う場合はMicroUSB 3.0にOTGケーブルを繋ぐことになります。アダプタが同梱されるのか別売になるのかはわかっていません。

USBだけでお腹いっぱいですが、ストレージ周りも凶悪です。まずフルサイズのSDXCスロットが2つあるので、データストレージ+マルチブートOSという構成も楽勝です。また、内部にMicroSDXCスロットがあり内蔵eMMCと切り替えて使えるようになっているので、Debianの入ったeMMCをバックアップ用に退避しつつMicroSDに入れた別OSをメインで使うこともできます。

MicroHDMIによる映像出力も可能です。抜かりない・・・

通信


WiFiは802.11a/b/g/n、BT4.1となっています。ac対応じゃないのは少し残念なところでしょうか。

しかし凄いのがLTEモデルがあるところです。US向け・EU向けの2モデルがあり、モデムのデータシートを見る限りEU向けモデルのPLS8-EはBand 1/3/7/8/20対応なので、日本でもドコモならBand 1/3、auならBand 1、SB/Y!mobileならBand 1/3/8が掴める?

また、モデムの製品ページを見ると「Dedicated approvals: Japan, USA」となっているので、もしかすると技適を通っているかもしれません。ただ製品としてPyraに載せた上で使える、ということなのかはわかりませんが。

加えて、LTEモデルはモデムにGPSが付随してくるので使い道が広がりそうです。

まとめ


非常に尖ったUMPCと言えるんじゃないでしょうか。古い言い方だとピーキーという感じ。

とにもかくにも非x86、非WindowsのARM Linuxハンドヘルドであるということに尽きると思います。この「Windowsが動かない」という点を受け入れられるかが、Pyraに魅力を感じる人とまったく感じない人の決定的な分かれ目になっていると思います。少なくとも、GPD WINより更にニッチなプロダクトであることは間違いありません。

しかし、Windowsを捨てたことでAtomですら困難な小型化、長時間駆動を実現しています。完全にスマホの領域、というよりフットプリントではPyraより大きいスマホすら存在するほどのサイズです。Netwalkerは言うに及ばず、同系統のAndroid機として有名なIS01よりも小さいです。

また拡張性に対する執着心も特筆モノです。4つのUSB、eSATA、3つのSDXCスロット、LTE・・・そしてSoCを別基板にして将来的なアップグレードも想定するなど、相当考えられて設計されているように感じます。

正直、価格も高く、最新の高性能SoCでないなど、広く勧められる製品ではないと思います。ですが、作り手の徹底的なこだわりは節々から感じられ、完成度の高いものになってくれそうな期待感があります。

小さい会社の超ニッチな製品であり、数多く売れるものではないと思いますが、是非成功してほしいと思える、そんなUMPCです。

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