PGSのKickstarterプロジェクトが中止になりました。あっけない幕切れ・・・に見えますが、もしかすると新しい詐欺の始まりかもしれません。
この前、PGSは成功しないだろうという話を書いていこう、色々と進展はあったものの実現可能性が向上するようなものは一切なかった(下がるようなものは大量にありました)ため特に触れずにいました。
このプロジェクトは当初(Kickstarter登場以前)から詐欺の可能性が指摘されていたものの、このブログの題材としては詐欺か否かはどうでもいいことだったので、前回は技術的な視点に絞った上でも無理でしょう、という話を書きました。
結果的に中止になったわけですが、同時にPGS LAB自身のサイトでのプレオーダーを開始したことで、自分としては詐欺の疑念は更に高まったと思っています。一方で、表面上詐欺っぽく見えなくなった面もあり、夢を応援する意味で技術的な実現可能性が低いことを承知でプレオーダーする人もいるかもしれません。
詐欺が否かは「どうでもいい」と思っていたのですが、技術的視点に絞った前回の記事だけを読んだ上で、詐欺の可能性が低いならプレオーダーしてもいいかなと思った人が万が一いたらさすがに申し訳ないので、「多分詐欺ですよ」ということを書いておきたいと思います。
今日までの経緯(ざっくり)
Kickstarterプロジェクトが開始して2日で目標額(10万ドル)到達、2週間足らずで35万ドル到達と順調に推移していましたが、数々の問題点によりそれ以降出資者が伸び悩むどころかキャンセルによる減少に転じ、30万ドルまで減少していました。
問題点についての詳細は省きますが、ざっと挙げると
- 実質的に進展ゼロ(無関係な動画やバラしたSurface3で遊んだという報告だけ)
- プロトタイプが張りぼて(Surface3の中身を3Dプリントした箱に詰めただけ)
- 第2弾プロトタイプも張りぼて(中身がVOYO V3になって詰め物にBTコントローラーが増えただけ)
- 公式コメントの態度(上記問題指摘者を荒らし・GPDの工作員扱い)
- 「荒らしに攻撃されている」とかいうふざけたアップデート
- チームメンバーのプロフィール偽装疑惑(偽名・役者起用など)
- 擁護コメント投稿者の雇い入れ疑惑
出資者の減少傾向に加え、出資期限の7/31に様子見してた人が大量キャンセルすることも予想されたので行く末をこっそり注目していたわけですが・・・
突然の中止
当初出資期限前最後のアップデートとしていた第2弾プロトタイプの張りぼてっぷりで更に炎上した後、「7/24に最後のアップデートをする」と告知されていました。そしてその日、Kickstarterでのプロジェクト中止が発表されました。
長文のくせに大したことは書いてないので全訳はしませんが、要旨としては
- このまま続けても荒らしには詐欺扱いされる
- 中止して30万ドルの資金調達をしないことで詐欺じゃないと証明し、世評を守る
- 当初目標額到達を条件としてた投資家との話し合いの結果、中止しても出資を受けられることになった
- そのため、PGS Hardcoreの開発は継続する
- 防水以外のストレッチゴールは実装する
- PGS Liteは需要が少ないので凍結
- 出資者のために自サイトでプレオーダーを開始する
「中止によって資金調達をしないことで詐欺じゃないと証明する」というのは一見とても真実味がある気がします。果たしてそうでしょうか?
最後の「自サイトでのプレオーダー」が無ければそう思えたかもしれません。しかしながらこちらに出資者を誘導する目論見がある以上やはり、というかより怪しくなったと考えています。
中止する必要はない
まず根本的な問題として、詐欺でないことを証明するためにKickstarterを中止する必要がないということです。製品を出せばいいんです。
製品を出すつもりでやっているのなら最終的にそれによって詐欺の疑念は無くなる、というより名実ともに詐欺ではなくなります。製品を出す段階に至る前であっても、動作する(張りぼてではない)プロトタイプを出した時点で(最終的に完成させられなかったとしても)詐欺であるという批判は容易に払拭できます。
出資期限までにキャンセルは続出するでしょうが、少なくとも目標額は超えられるわけで、期限以降その額は増えも減りもしない以上それを元手に開発を進めていくならばいずれ詐欺でないことは明白にできるはずです。
Kickstarterによる強制停止の可能性
また、Kickstarterによってプロジェクトが強制的に停止される可能性があったことも見過ごせません。
Kickstarter側はプロジェクトを断りなく停止する権限を持っており、実際過去に突然停止となったプロジェクトは存在します。
強制停止の基準は非公表で、停止された場合でもその理由は公開されませんが、「詐欺の可能性が高い」が停止基準に合致していないわけはないでしょう。また、最終製品となんら関係ない既製品を分解して作った自称プロトタイプがKickstarterの規約に違反していた可能性もあります(少なくともプロトタイプ無しのCGのみは許されないので)。
また、コメント欄を読む限り「これは詐欺ではないか?」という問い合わせをKickstarter側に証拠付きでしていた出資者は複数いたようです。
Kickstarterより「開発に着手していることがわかる証拠」「役者・擁護者雇い入れ疑惑を払拭できる証拠」の提示ができないと強制停止する、という通達がPGS LABに行っていたかは定かではありませんが、進展が無いことを見て出資期限日近辺でKickstarterが強制停止を執行していた可能性はかなり高いように見えます。
強制停止の可能性がかなり高いとPGS LABが認識していたとしたら中止の決定はかなり色合いが変わってきます。30万ドルを放棄して詐欺でないことを証明したのではなく、どちらにしろ出資金を受け取れないのなら強制停止の烙印を押される前に荒らしのせいにして逃げた、ということになるからです。
自サイトでのプレオーダー
決定的に怪しいのがここです。想定売価$360を予定しているため、中止が出資者に不利にならないよう$299でのプレオーダーを開始するとのことです。しかも自サイトで。
一見普通の出資者救済策に見えますが、そもそも開発を継続するなら上述の通りKickstarterでのキャンペーンを中止しなければいいわけです。
自サイトであれば、アップデートの発信やコメント欄での返答をする必要もなく、コメント目的の$1出資者もいないため瑕疵を指摘されて炎上することもありません。Kickstarterのような第三者の仲介がないのでプロジェクトに透明性が不要で、集まった資金を持ち逃げすることが容易になります。これは非常に危険です。
また、
「自サイトではKickstarterで集まった30万ドルに達するはずないから自サイトに切り替えるのは詐欺じゃないだろう」という考えもありますが、最終日のキャンセルで30万ドルを更に割り込むことが見込まれたことと、それ以前に上述のように1ドルも受け取れない可能性があったことを考えると、資金が即座に懐に入る自サイトでのプレオーダーは悪い意味で理に適っていると思います。
つまり
未だ「詐欺である」「詐欺でない」を断定する材料があるわけではありませんが、今回のKickstarterキャンペーン中止と自サイトでのプレオーダー開始は、よくよく考えると「詐欺でないなら不要な行動」かつ「詐欺でやっているなら理に適った行動」であると言えます。
そして、よくよく考えず表面上だけ見ると「詐欺であるならやらない行動」に見えている・見せているのが厄介なところです。
個人的には、Kickstarter上での個人攻撃・GPD批判といったPGS LABの言動を見て「製品が出たとしても彼らからは買いたくない」とさえ思っていたのでもはや詐欺であろうがなかろうが関係ないのですが、この顛末を「詐欺でない」という判断材料にしてプレオーダーしてしまう人がいたら一度触れた手前罪悪感があるので取り上げました。
大変興味深く読ませて頂きました。
返信削除結構期待していたので、もう少し高くてもいいから、まともにKSで続けて欲しかったです。
実売されていれば作り手がアレな人々でも手を出す可能性はありますが、プレオーダーは怖くて手が出ないですね。